洗面台の水の流れが悪くなった時、手軽な解決策として真っ先に思い浮かぶのは、市販の強力な液体パイプクリーナーかもしれません。しかし、その刺激臭や、強力な化学薬品を家庭の排水口に流すことへの抵抗感から、使用をためらってしまう方も少なくないでしょう。そんな方にこそ試していただきたいのが、食品としても使われるほど安全な「重曹」と「クエン酸」を活用した、環境にも人体にも優しいナチュラルクリーニングです。この二つの白い粉が持つ化学の力を利用すれば、不快なつまりを安全かつ効果的に解消することができます。 洗面台のつまりの主な原因は、髪の毛に皮脂や石鹸カスといった「酸性の汚れ」が絡みついてできたヘドロです。まず、弱アルカリ性である重曹が、これらの酸性の汚れを中和し、分解しやすい状態へと変化させます。そして、この重曹に酸性のクエン酸を反応させると、中和反応によって二酸化炭素の泡がシュワシュワと勢いよく発生します。この無数の細かい泡が、配管の内側にこびりついた汚れの隙間に入り込み、物理的に浮かび上がらせて剥がしてくれるのです。つまり、汚れを中和する化学作用と、泡の力で浮かせる物理作用のダブルパンチで、つまりの原因を根本からスッキリさせることができます。 その実践方法は驚くほど簡単です。まず、排水口に重曹をカップ半分から一杯ほど、まんべんなく振り入れます。次に、その上から重曹の半量程度のクエン酸を振りかけ、コップ一杯程度のぬるま湯(四十度から五十度が最適)をゆっくりと注ぎます。するとすぐに発泡が始まるので、そのまま三十分から一時間ほど放置してください。この間に、泡の力が汚れをじっくりと分解してくれます。時間が経ったら、最後にバケツ一杯程度の水かぬるま湯で一気に洗い流せば完了です。 ただし、この方法はあくまで軽度なつまりの解消や、定期的なメンテナンスに適したものです。完全に水が流れなくなってしまった固形物によるつまりには効果が薄いため、その場合は無理せず専門業者に相談しましょう。また、塩素系の洗剤とは絶対に混ぜないでください。月に一度、この重曹とクエン酸を使った「泡の掃除」を習慣にするだけで、洗面台のつまりを予防し、いつでも快適な状態を保つことができます。