あれは数年前の、特に冷え込みが厳しい冬のことでした。数日間家を空けることになり、私は初めて給湯器の水抜きに挑戦しました。取扱説明書を片手に、給水元栓を閉め、本体下部にある水抜き栓を緩めると、ちょろちょろと水が出てきました。これで一安心、と私は満足して家を出たのです。しかし、旅行から帰宅した日の朝、蛇口をひねってもお湯は一滴も出ませんでした。あんなにしっかり作業したはずなのに、給湯器は無情にも凍結してしまっていたのです。 結局、専門の業者の方に来てもらい、原因はすぐに判明しました。私の失敗は、あまりにも初歩的で、そして致命的なものでした。それは、水抜き作業の際に「家の中のお湯側の蛇口を開けておく」という工程を完全に忘れていたことでした。業者の方曰く、蛇口を開けて配管内に空気の通り道を作ってあげないと、真空のような状態になって水が完全に抜けきらないことがあるそうです。私が行った作業では、給湯器本体の一部の水は抜けましたが、屋外の配管などには水が残ったままになっており、それが凍結してしまったのでした。 この手痛い失敗から私が学んだのは、手順の一つ一つには必ず意味があるということです。取扱説明書を読んだつもりになって、大切な工程を自己判断で省略してしまったことが、全ての原因でした。水抜き栓から水が出たから大丈夫だろう、という安易な思い込みが、結果的に高額な修理費用となって返ってきました。もしあの時、少しでも作業に不安を感じた時点で、無理せず管理会社や専門家に相談していれば、こんなことにはならなかったでしょう。 給湯器の水抜きは、正しい手順を正確に実行してこそ意味があります。私のこの苦い経験が、これから水抜きをしようと考えている方への教訓となれば幸いです。面倒に感じても、一つ一つの工程を確実に守ること。それが、冬の朝に絶望するような事態を避ける、唯一の方法なのです。
水抜きしたはずなのに給湯器が凍結した私の失敗談