長年にわたって私たちの生活を支えてくれている給湯器。特に使用年数が十年を超えたような古いモデルには、新品にはない独特の風格と愛着を感じるものです。しかし、冬の凍結対策として水抜きを行う際には、この「古さ」が思わぬ落とし穴になる可能性があることを忘れてはいけません。新しい給湯器と同じ感覚で作業に臨むと、良かれと思って行った対策が、かえって故障を招く引き金になりかねないのです。古い給湯器で最も注意すべきなのは、水抜き栓の状態です。長年一度も動かされることのなかった金属製の水抜き栓は、内部で錆びついたり、水垢やカルキが固着したりして、固くて回らないことが少なくありません。ここで焦って、工具などを使って無理やり力を込めて回そうとするのは非常に危険です。固着した栓に過度な力を加えると、栓そのものがねじ切れてしまったり、接続されている配管を破損させてしまったりする恐れがあります。そうなれば、凍結を防ぐどころか、大規模な水漏れと高額な修理費用という最悪の事態に直面することになります。また、仮に水抜き栓が無事に回ったとしても、安心はできません。栓には水の密閉性を保つためのゴム製のパッキンが使われていますが、このパッキンも経年によって弾力性を失い、硬化したりひび割れたりしている可能性があります。劣化したパッキンは、一度緩めてしまうと元の密閉性を保てなくなり、作業後に栓を固く締め直したつもりでも、そこからじわじわと水が漏れ出してくることがあるのです。もしご自宅の給湯器が長年使っているもので、水抜き栓に少しでも固さや見た目の劣化を感じる場合は、決して無理をしないでください。自分で判断せずに、まずは専門の業者に点検を兼ねて相談するのが最も安全で確実な選択です。長年連れ添った給湯器だからこそ、その扱いには一層の慎重さが求められるのです。
古い給湯器の水抜き作業は慎重に