私たちの平穏な生活を静かに、しかし確実に脅かす存在が、トイレタンクから聞こえてくるかすかな水の音です。深夜、静まり返った家の中で耳を澄ませたときに聞こえるあの「チョロチョロ」という音を、単なる気のせいだと放置してしまったがために、数ヶ月後に届いた水道料金の請求書を見て愕然とする、というケースは後を絶ちません。トイレタンクの水漏れは、蛇口からの水漏れとは異なり、漏れた水がそのまま排水へと消えていくため、床が濡れるなどの実害が出にくく、発見が遅れがちです。ある事例では、わずかなパッキンの劣化による水漏れを三ヶ月放置した結果、通常の二倍以上の水道料金を請求され、慌てて修理を依頼したところ、内部の金属部品まで錆び付いており、修理費用が跳ね上がってしまったという報告もあります。このような事態に陥らないために、まず知っておくべきは修理費用の現実的な内訳です。トイレタンクの修理は、その原因がタンク内部にあるのか、あるいは給水管との接続部にあるのかによって大きく異なります。タンク内部のゴムフロートと呼ばれる栓の交換だけであれば、部品代は千円前後、工賃を含めても一万二千円程度で済むことが多いですが、これがタンクと便器を繋ぐ密結ボルトの腐食やパッキンの劣化となると、重いタンクを一度完全に取り外す脱着作業が必要となり、技術料だけで二万円を超えることもあります。このように、作業の難易度によって料金が段階的に設定されているのがこの業界の常識です。さらに、最近のタンクレストイレや高度な節水機能を持つモデルの場合、メーカー独自の電子制御部品が使われていることがあり、その修理には専門のサービスマンが必要で、料金が三万円から五万円に達することもあります。自分が使っているトイレの型番を把握し、それが汎用部品で直せるものなのかを確認しておくことは、突然の出費に備える上で非常に重要です。また、水漏れ修理を依頼する際に「ついでに他の箇所も点検してもらう」というのも、賢いコストダウンの手法です。水道業者の料金において、出張費は一度の訪問で固定されているため、一回の訪問でトイレだけでなく、洗面所やキッチンの水漏れもチェックしてもらえば、将来的な故障を未然に防ぎ、トータルのメンテナンス費用を抑えることができます。水は私たちの生命線であり、それを管理するインフラへの投資を惜しむことは、結果として大きな損失を招きます。かすかな音に気づいたその瞬間こそが、最も安く修理を済ませるための最大のチャンスであると心得ておくべきでしょう。
チョロチョロ音が招く高額な水道代と修理費用のリアルな実態