トイレの止水栓から水が漏れている時、その原因の9割以上は、内部に使われている「ゴムパッキン」の経年劣化にあります。止水栓は、水の流れを制御するという重要な役割を担っていますが、その構造は意外とシンプルであり、水漏れが起こりやすい箇所も特定されています。原因を正しく理解することが、適切な修理への第一歩となります。まず、止水栓のどこから水が漏れているのかを特定しましょう。漏水箇所は、主に三つに大別されます。一つ目は、「ハンドルの根元(スピンドル部分)」からの水漏れです。ハンドルを回して水の量を調整する軸(スピンドル)の周りには、水の漏れを防ぐための「三角パッキン」や「Uパッキン」と呼ばれる、特殊な形状のパッキンが組み込まれています。このパッキンが、長年の使用による摩耗や、ゴムの硬化によって弾力性を失うと、その隙間から水がじわじわと滲み出してくるのです。二つ目は、「給水管との接続ナット部分」からの水漏れです。止水栓と、トイレタンクやウォシュレットに繋がる給水管は、ナットで締め付けられて接続されています。このナットの内部にも、水の漏れを防ぐための平たい円盤状のゴムパッキンが入っています。このパッキンが劣化すると、接続部から水が漏れ出してきます。また、地震などの振動で、この接続ナット自体が緩んでしまい、水漏れを引き起こすこともあります。そして三つ目が、「壁や床との接合部分」からの水漏れです。これは、止水栓本体と、壁や床の中を通っている給水管との接続部分に問題があるケースで、最も深刻な可能性があります。この部分のシールテープの劣化や、配管自体の腐食が原因である場合、修理には専門的な技術が必要となります。いずれのケースにおいても、主な原因は「ゴムパッキンの寿命」です。ゴムは、常に水にさらされ、圧力がかかっている過酷な環境にあるため、一般的に10年程度で劣化し、交換時期を迎えると言われています。トイレの止水栓からの水漏れは、見えない場所で静かに働き続けてきた小さな部品が、その寿命を知らせるサインなのです。