賃貸アパートやマンションで暮らしていると、キッチンの水栓が古くて使いにくかったり、もっと節水効果の高いものに交換したくなったりすることがあります。しかし、その気持ちのまま自分で業者を手配したり、DIYで交換したりするのは絶対に待ってください。賃貸物件の設備には、持ち家とは異なる重要なルールが存在し、それを無視すると後で大きなトラブルに発展しかねません。 まず大原則として、水栓は部屋の「設備」であり、その所有権は大家さん(貸主)にあります。入居者は、その設備を善良な管理者として注意して使用する義務(善管注意義務)を負っていますが、勝手に改造したり交換したりする権利はありません。もし無断で交換してしまうと、契約違反と見なされる可能性があります。 では、水栓を交換したい場合はどうすれば良いのでしょうか。答えは一つ、「必ず事前に大家さんか管理会社に相談する」ことです。その上で、交換の理由によって費用負担の交渉が変わってきます。もし、水漏れやハンドルの破損といった「経年劣化や故障」が原因であれば、修理や交換の義務は大家さん側にあるため、費用も大家さん負担で対応してもらえることがほとんどです。 一方で、「もっとおしゃれなデザインにしたい」「シャワー機能付きの便利なものにしたい」といった、入居者の希望によるグレードアップが目的の場合は、交換費用は自己負担となるのが一般的です。その場合でも、必ず大家さんの許可を得る必要があります。そして、もう一つ忘れてはならないのが「原状回復義務」です。自己負担で交換した場合、退去時には元の状態に戻す、つまり取り外した古い水栓を再度設置し直すことを求められる可能性があります。交換の許可を得る際に、取り外した古い水栓の保管方法や、退去時にどうするかまでを書面などで確認しておくことが、後のトラブルを防ぐための重要なポイントとなります。 賃貸での水栓交換は、自己判断が最も危険です。まずは管理会社に一本電話を入れる。その正しい手順を踏むことこそが、快適な暮らしと円満な退去への一番の近道なのです。