近年、給湯器の性能は大きく向上し、特に寒冷地仕様と呼ばれるモデルは強力な凍結予防機能を備えています。そのため、豪雪地帯や冬の厳しい地域にお住まいの方の中には「うちの給湯器は寒冷地仕様だから、水抜きのような面倒な対策はしなくても大丈夫」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。確かに、これらのモデルは標準的な製品に比べて凍結に強い設計がなされていますが、その性能を過信するのは大変危険です。 寒冷地仕様の給湯器は、内部のヒーターを強化したり、配管の断熱材を厚くしたりすることで、厳しい外気温の中でも機能が維持できるように作られています。日常的な使用環境下においては、その性能を十分に発揮し、凍結のリスクを大幅に低減してくれることは間違いありません。しかし、それはあくまで給湯器の電源が入っており、正常に機能していることが大前提です。例えば、ブレーカーが落ちてしまったり、節電のつもりでコンセントを抜いてしまったりすれば、自慢の凍結予防機能も全く働きません。 また、メーカーが想定している以上の記録的な大寒波が襲来した場合や、旅行や帰省で何週間も家を空けるような状況では、いくら寒冷地仕様であっても凍結する可能性は十分に考えられます。実際に、ほとんどの給湯器メーカーは、たとえ寒冷地仕様の製品であっても、長期間使用しない際には必ず水抜きを行うよう取扱説明書で推奨しています。つまり、寒冷地仕様とは「凍結しにくい」のであって、「絶対に凍結しない」わけではないのです。この違いを正しく理解しておくことが、冬のトラブルを避ける上で極めて重要になります。 「大丈夫だろう」という油断が、高額な修理費用や不便な生活に繋がります。お使いの給湯器が高性能なモデルであっても、長期不在時や異常な冷え込みが予想される際には、基本に立ち返って水抜き作業を行う。それが、大切な給湯器を確実に守るための最も賢明な選択と言えるでしょう。
寒冷地仕様の給湯器なら水抜きは不要か