新築マンションのオプション選びをしていた頃の私は、カタログに並ぶタンクレストイレの洗練されたフォルムにすっかり魅了されていました。トイレ特有の生活感を感じさせない、ホテルのような空間を実現したいという一心で、高額な追加費用を払ってタンクレストイレを導入したのです。しかし、実際に暮らし始めて数年が経過した今、当時の私に「タンクレストイレはやめたほうがいい」と切実に訴えかけたい気持ちでいっぱいです。まず、最初につまずいたのは、意外にも掃除のしにくさでした。タンクがないので背後がすっきりして掃除が楽になると思い込んでいましたが、現実は異なりました。タンクレストイレを設置するために別途設けた手洗いカウンターの下や、複雑な形状をした給排水の接続部には埃が溜まりやすく、むしろ掃除の手間は増えたように感じます。さらに、子供が生まれたことで状況は一変しました。タンク式のように「タンクの上で手を洗う」ことができないため、子供たちは小さな手洗い器を使わなければなりませんが、どうしても周囲に水が飛び散ります。結果として、トイレの壁紙には水跳ねによるシミができ、掃除の範囲は壁や床まで広がってしまいました。そして、最もショックだったのは停電時の無力さです。昨年、台風の影響で数時間の停電が発生した際、我が家の最新鋭のトイレは完全に沈黙してしまいました。レバー一つで流れるタンク式とは違い、電動で弁を動かすタンクレストイレは電気がなければただの箱です。説明書を暗い中で読み解き、隠れた場所にある非常用レバーを探し、何度もバケツで水を運ぶ羽目になった際、デザインという表面的な価値がいかに脆弱なものであるかを痛感しました。修理に関しても不安が尽きません。先日、ノズルの動きが悪くなったため見積もりを取りましたが、一体型ゆえにユニットごとの交換を勧められ、その提示額は安価なタンク式トイレが丸ごと買えてしまうほどでした。見た目の満足感は最初の数ヶ月で薄れましたが、日々の不便さと将来のコストへの不安は消えることがありません。もし時計の針を戻せるなら、私は迷わず、質実剛健でどんな時でも確実に機能してくれる、伝統的なタンク付きのトイレを選んでいたはずです。