長く厳しい冬が終わり、日中の日差しに春の訪れを感じ始めると、給湯器の凍結という冬特有の悩みからも解放された気分になるものです。しかし、この「もう大丈夫だろう」という安心感こそが、思わぬ落とし穴になることがあります。春先は「花冷え」や「寒の戻り」といった言葉があるように、暖かい日が続いたかと思えば、突然真冬のような寒さがぶり返すことが珍しくありません。この油断しがちな時期の急な冷え込みこそ、給湯器にとって非常に危険なタイミングなのです。 春先の凍結が起こりやすい背景には、気候的な特徴と私たちの心理的な油断が関係しています。春は天気が変わりやすく、日中はポカポカ陽気でも、夜間には放射冷却によって気温が急降下し、明け方には氷点下まで下がることもあります。冬の間は毎日欠かさずチェックしていた最低気温の予報も、暖かくなってくるとつい見過ごしがちになります。冬の間ずっと続けていた凍結対策をやめてしまった直後に、こうした予期せぬ寒波に見舞われると、給湯器は全く無防備な状態で冷気にさらされることになってしまうのです。 特に注意したいのが、春休みの旅行などで数日間家を空ける場合です。季節はもう春だからと、何の対策もせずに長期不在にしてしまうのは非常にリスクが高い行為です。出発地の気候が暖かくても、旅行中に自宅のある地域が寒波に見舞われる可能性は十分にあります。たとえ三月や四月であっても、出発前には必ず滞在期間中の天気予報を確認し、最低気温が氷点下に近づくようなら、冬場と同様に給湯器の水抜き作業を検討すべきです。 給湯器の凍結対策は、カレンダー上の季節で判断するのではなく、あくまで実際の気温を基準に行うべきものです。せっかく冬の間、注意深く対策を続けて無事に乗り切ったのに、春先のほんの少しの油断で給湯器を故障させてしまっては元も子もありません。本当の意味で安心して春を迎えるためにも、最後の寒波が過ぎ去るまでは、天気予報への注意を怠らないようにしましょう。
春の油断が招く給湯器の凍結トラブル