私は自他共に認める「節水マニア」です。お風呂の残り湯を洗濯に使うのは当然として、トイレの大洗浄を控える、食器を洗う際は桶に水を溜めてすすぐなど、徹底した管理を行っています。そんな私の努力をあざ笑うかのように、先月の水道料金の請求書には、過去最高額となる一万八千円という数字が刻まれていました。普段は三千円代で収まっているため、これはもはや「おかしい」というレベルを通り越して、何かの間違いだと確信しました。私はまず、家族の中で誰かが水を無駄遣いしていないか、あるいは隠れてプールでも作ったのではないかと、半ば本気で疑いの目を向けました。しかし、家族全員が潔白を主張し、実際にそのような形跡もありません。私は探偵のように家中の調査を開始しました。まず行ったのは、家中の全ての蛇口を閉め、メーターを見に行くことです。しかし、パイロットは微動だにしていませんでした。「漏水ではないのか」と、さらに謎は深まりました。次に考えたのは、検針ミスです。メーターに記された数字と検針票の数字を照らし合わせましたが、残念ながら一致していました。その後、一週間にわたって毎日決まった時間にメーターを確認し、一日の使用量をエクセルに記録するという執念の調査を続けました。すると、奇妙なことが分かりました。昼間や起きている時間は使用量が極めて少ないのに、夜中の寝ている間にだけ、かなりの量の水が消費されているのです。私はある夜、深夜二時に起きて、家中の音を耳を澄ませて聞きました。すると、トイレから微かに「サーッ」という音が聞こえてくるではありませんか。便器を覗き込んでも、水面は鏡のように静かです。しかし、トイレのタンクをよく見ると、手洗い管の隙間から、糸のような細さで水が流れ続けていました。それはあまりにも細い流れだったので、普段は音もせず、波紋も立たなかったのです。計算してみると、その極小の流れが二十四時間、一ヶ月間続くことで、数万リットルもの水が浪費されていたことが判明しました。タンク内のフロートゴムの劣化という、わずか数百円の部品の故障が、私の長年の節水努力を水の泡にし、高額な請求を招いた正体でした。この経験から学んだのは、異常な料金は「自分の目で見える場所」ではなく「自分の意識の外」で発生しているということです。それ以来、私は数値だけでなく、家が発する微かな「音」にも敏感になりました。
節水に励む我が家の水道代が跳ね上がった不可解な一ヶ月の記録