環境意識の高まりとともに、節水性能を理由にタンクレストイレを選ぶ方が増えています。確かに、最新のタンクレストイレは一回の洗浄に使う水の量が劇的に少なく設計されており、従来の古いタンク式が十リットル以上の水を使っていたのに対し、三リットルから四リットル程度で済むモデルも珍しくありません。しかし、節水という一点だけで「タンクレストイレをやめたほうがいい」という意見を無視するのは早計です。なぜなら、ランニングコストという面では、水道代の節約分を他の経費が上回ってしまう可能性があるからです。まず電気代についてですが、タンクレストイレは水を流す際にも電力を使用します。電動ポンプや電磁弁を作動させる必要があるため、重力を利用するタンク式に比べて電気の消費ポイントが増えます。また、瞬間暖房便座や自動開閉、オート便器洗浄などの付加機能が豊富であればあるほど、待機電力や稼働時の電気代は積み重なります。水道代が年間で数千円安くなったとしても、電気代の増加や、後述するメンテナンス費用でそのメリットは簡単に吹き飛んでしまいます。さらに見落とされがちなのが、水道代の節約が招く「配管の詰まり」のリスクです。節水性能を高めるために極限まで水の量を減らしていますが、家全体の排水管の勾配が適切でない場合、少ない水では排泄物を公共の下水道まで運びきれず、管の途中で停滞してしまうことがあります。これが積み重なると、床下の配管で詰まりが発生し、業者による高圧洗浄が必要になります。一回の高圧洗浄費用は数万円にのぼり、せっかくの節水で浮かせたお金が一瞬で消えてしまうだけでなく、生活に多大な支障をきたします。また、タンクレストイレの部品は、高性能ゆえに非常にデリケートです。水質の影響を受けやすく、地域によっては水に含まれる微細な砂や塩素によって内部の弁が早期に摩耗し、微細な水漏れを引き起こすこともあります。この水漏れに気づかず放置していれば、節水どころか逆に水道代が跳ね上がることになります。エコという言葉の響きは良いですが、それはシステム全体が健全に機能していることが前提です。初期投資、電気代、将来の修理費、そして配管のメンテナンス費用までを含めたトータルコストで考えたとき、タンクレストイレが本当に経済的なのか、それとも頑丈でシンプルなタンク式のほうが結果として家計に優しいのかを、数字に基づいて冷静に分析する必要があるのです。
水道代や電気代から考えるタンクレストイレ導入の是非