現場で何千台ものトイレを修理し、取り付けてきた職人の本音として、タンクレストイレをやめたほうがいいと強く感じる瞬間が多々あります。私たち修理屋が一番困るのは、お客様から「水が止まらない」や「流れない」という緊急の電話を受けて駆けつけた際、それが最新のタンクレストイレだった時です。タンク式なら、ボールタップやゴムフロートといった共通の消耗品を持っていれば、その場ですぐに直せることがほとんどです。しかし、タンクレストイレは「ブラックボックス」です。カバーを開けると精密な配線と基板が詰まっており、特定のメーカーの特定の型番専用の部品がなければ、指一本触れることができません。結局、メーカーのサービスマンを手配するしかなく、その間お客様は数日間トイレを使えない不自由を強いられます。また、最近の節水競争も現場では頭の痛い問題です。タンクレストイレは極限まで水の量を減らしていますが、家全体の配管が古いままでは、少ない水では排泄物を下水道の本管まで運びきれません。その結果、床下の配管で詰まりが発生し、高額な高圧洗浄を行わなければならなくなる事態を何度も見てきました。お客様は「トイレが節水だから得をした」と思っていても、その裏で配管のメンテナンス費用を支払っているのでは本末転倒です。さらに、タンクレストイレの「重さ」も隠れたリスクです。多機能ゆえに便器本体が非常に重く、将来的に床が腐食したり沈んだりした際、その重みが原因で配管を圧迫し、さらなる漏水を招くことがあります。特に二階に設置する場合、床の補強が必要になることも珍しくありません。職人の目から見れば、トイレはシンプルであればあるほど良い機械です。陶器の便器に水が溜まる箱が付いている、という原点に近い構造こそが、最も壊れにくく、かつ誰にでも修理が可能な、本当の意味での「良い設備」なのです。デザインは十年で古臭くなりますが、確実に流れるという信頼性は一生の価値があります。私たちは、派手な機能よりも「いざという時に自分たちで何とかできる」という安心感をお客様に選んでほしいと、切に願っています。